『学術情報と図書館』

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1999年11月に発行した新刊著書の紹介ページです。



書誌データ

書 名 学術情報と図書館
著 者 海野敏, 影浦峡, 戸田愼一
出版者 雄山閣出版株式会社
出版年・発行日 1999年11月5日
シリーズ名 講座 図書館の理論と実際 第9巻
判型・ページ数 A5判, 243 p.
定 価 本体2524円+税


目 次(章節レベル)

はしがき

1 学術情報の地平
  1.1 学術情報とは何か
  1.2 学術情報の特徴
  1.3 現代社会と学術情報

2 学術情報を担う情報メディア
  2.1 情報メディアの多様化と学術情報
  2.2 印刷メディアの種類と特性
  2.3 ネットワーク系メディアの種類と特性

3 学術情報の流通システム
  3.1 研究者コミュニティ
  3.2 学術情報の環流モデル
  3.3 業績評価システム

4 学術情報の組織化
  4.1 書誌コントロールの世代論
  4.2 第1世代の書誌コントロール
  4.3 第2世代の書誌コントロール
  4.4 第3世代の書誌コントロール

5 学術情報の電子化と図書館の機能
  5.1 学術情報流通における図書館
  5.2 印刷メディアの行き詰まりと電子出版
  5.3 電子図書館
  5.4 図書館の未来

索 引

「はしがき」より抜粋

 本書は、学術情報のカレントな実態と、学術情報と図書館のリアルな関係とを論じることによって、情報と知識をめぐる社会システムの読み直しを試みたものである。

(中 略)

 本書では、現代社会におけるネットワーク環境の進展、定着を見据えて、学術情報を生産、流通、蓄積している社会システムの実態と展望を論じた。このような社会システムのいくつかの側面を俯瞰的に解説した上で、このシステムにおける図書館の社会的な役割が何であったのか、それがどのように変化しつつあるのかを考察した。すなわち、おもに印刷メディアを扱ってきた伝統的な図書館のイメージを払拭し、学術情報と図書館、両者の本質を原理・原則に立ち戻って問い返すことで、学術情報と図書館の新たな関係はどのように築きうるのか、近未来の情報サービスはどこへ向かうのかを眺望した。

 本書の構成をざっと紹介しておこう。

 第1章では、学術情報とは何かを論じた。まず学術情報を定義し、その本質的な特徴をいくつかの側面から指摘した。そのうえで、現代社会における学術情報のあり方の変容を、トマス・クーンの「パラダイム論」とマイケル・ギボンズの「モード論」の助けを借りながら考察した。

 第2章では、学術情報が何によって流通するかを論じた。学術情報を対象とする多様な仕組みを、身体系メディア、通信系メディア、蓄積系メディア、ネットワーク系メディアの四つに体系化して解説した。なかでも話題の中心に据えたのは、伝統的な蓄積系メディアである印刷メディアと、新しい時代を呼び寄せつつあるネットワーク系メディアである。これらについては、それぞれ節を設けて詳しく論じた。

 第3章では、学術情報がどのように流通するかを論じた。まず、学術情報の生産・消費の場としての研究者コミュニティを考察した。次に、学術情報の流通プロセスに関する既存の研究を見直し、新しい独自のモデルを提案した。すなわち13の情報処理過程からなる「学術情報の環流モデル」である。さらに、学術情報の生産と流通の原動力とも言える「業績評価システム」について、ロバート・マートンの議論を拡張して論じた。なお、この章で初めて、学術情報流通と図書館の関係に言及する。

 第4章では、学術情報がどのように組織化されるかを論じた。まず、検討の枠組みとして「書誌コントロールの世代論」を提示したうえで、第1世代、第2世代について歴史的な経緯を説明した。新しい時代の「第3世代の書誌コントロール」に関しては、ネットワーク情報資源を対象とした「メタデータ」標準化の動向と課題を、やや詳しく紹介した。

 第5章では、学術情報と図書館の関係について論じた。まず、印刷メディアを軸とした伝統的な図書館の役割を整理した。次に、学術情報流通における「印刷メディアの行き詰り」の状況を説明し、その打開策としての電子ジャーナルの可能性を論じた。最後に、ネットワーク系メディアの導入に伴う図書館と書誌ユーティリティの機能変容についてまとめた。

(後 略)

目 次(章節項レベル)

はしがき

1 学術情報の地平
1.1 学術情報とは何か
    1.1.1 情報のレベル
    1.1.2 学術情報の定義
    1.1.3 知識成長の不連続性
    1.1.4 学術情報と研究情報
1.2 学術情報の特徴
    1.2.1 内容的な特徴
    1.2.2 流通における基本的特徴
    1.2.3 数量的な特徴
1.3 現代社会と学術情報
    1.3.1 科学の世紀
    1.3.2 量的膨張と質的変容
    1.3.2 研究者の社会的責任

2 学術情報を担う情報メディア
2.1 情報メディアの多様化と学術情報
    2.1.1 メディアの定義と分類
    2.1.2 研究活動におけるメディアの機能
    2.1.3 身体系メディア
    2.1.4 通信系メディア
    2.1.5 蓄積系メディア
    2.1.6 ネットワーク系メディア
2.2 印刷メディアの種類と特性
    2.2.1 学術雑誌
    2.2.2 学術雑誌類(1)〜一次メディア〜
    2.2.3 学術雑誌類(2)〜二次メディア〜
    2.2.4 学術図書
    2.2.5 その他の印刷メディア
2.3 ネットワーク系メディアの種類と特性
    2.3.1 ネットワーク上の研究者コミュニティ
    2.3.2 電子ニューズレター
    2.3.3 電子ジャーナル
    2.3.4 テキストアーカイブ
    2.3.5 電子的ドキュメントデリバリーサービス

3 学術情報の流通システム
3.1 研究者コミュニティ
    3.1.1 社会集団としての特徴
    3.1.2 学術的な組織(1)〜大学と学会〜
    3.1.3 学術的な組織(2)〜その他〜
    3.1.4 学界と「見えざる大学」
3.2 学術情報の環流モデル
    3.2.1 研究活動における環流モデル
    3.2.2 蓄積系メディアの環流モデル
    3.2.3 モデルの拡張
    3.2.4 情報サービス機関の位置づけ
3.3 業績評価システム
    3.3.1 業績評価の意義
    3.3.2 さまざまな評価システム
    3.3.3 学術情報の普遍化プロセス

4 学術情報の組織化
4.1 書誌コントロールの世代論
4.2 第1世代の書誌コントロール
    4.2.1 19世紀まで
    4.2.2 RBU
    4.2.3 20世紀
4.3 第2世代の書誌コントロール
    4.3.1 書誌データベースのオンライン検索
    4.3.2 書誌ユーティリティー
    4.3.3 一次情報の電子化とネットワーク化
4.4 第3世代の書誌コントロール
    4.4.1 ネットワーク情報資源の探索
    4.4.2 メタデータ
    4.4.3 ネットワーク情報資源の所在指示
    4.4.4 ネットワーク情報資源の識別
    4.4.5 ネットワーク情報資源の記述

5 学術情報の電子化と図書館の機能
5.1 学術情報流通における図書館
    5.1.1 図書館の機能
    5.1.2 書誌ユーティリティ
    5.1.3 図書館協力
5.2 印刷メディアの行き詰まりと電子出版
    5.2.1 印刷メディアの行き詰まり
    5.2.2 図書館と学術出版社
    5.2.3 電子ジャーナルの可能性
5.3 電子図書館
    5.3.2 電子図書館の多様性
    5.3.3 図書館と電子図書館
    5.3.4 電子情報サービスの展開
5.4 図書館の未来
    5.4.1 印刷メディアの蓄積・流通に対する役割
    5.4.2 ネットワーク系メディアに対する役割
    5.4.3 書誌ユーティリティの新たな役割
    5.4.4 図書館協力の新たな方向

索 引

umino@hakusrv.toyo.ac.jp